西伊豆の家 はなれ

築100年の納屋の改修プロジェクト。使わない布団や食器、季節によっては庭で採れる蜜柑の保管庫として利用されていたスペースを、退職して第二の人生を歩み始める施主がものづくりを行う為の工房兼ギャラリーとして改修した。夕陽が美しい西伊豆の山の中腹に立地することから、夕焼けの海を眺めたり、木漏れ日を内部に取り入れながら四季を感じることのできる空間を計画した。1日1日…1年1年の時の移ろいの中で刻々と変化する光が、小さな空間の中に色々な場を作り出す。それが、作り手の創作意欲を掻き立てるのに少しでもお役に立てたらと願う。

基本データ
構  造:木造平屋
延床面積:95.2㎡(28.8坪)
所  在:静岡県伊豆市
設  計:吉川和博/●▲■ × 川尻夕香/建築設計mellhips
施  工:永岡工務店

改修前の東面は全面が引き戸で、左右の戸袋に戸を収めるようになっていた。耐震性を高める上でもFIXの壁としたが、この風合いはどんな材料を使っても出せないと思い、そのまま外壁の仕上げとして利用することにした。

納屋の中に長い間眠っていた「くぐり戸付き大戸」と呼ばれる玄関用の防犯戸。かつては主屋の玄関に設置され、夜は防犯の為にこれを閉めていたそうだ。この圧倒的な存在感を利用しない手は無いということで、はなれの入り口の戸として再利用することとした。

改修前、はしごを使って屋根裏を覗いた時にこの湾曲した梁が連続した姿を発見し、新しい空間にもこれを生かしたいと考えた。

改修前の現場を、時間を変えて何度も見ているうちに出会った夕陽の木漏れ日。温熱環境的には西日を室内に直接入れることはマイナス要素ではあるが、それを超えた豊かさがこの場所にはあると確信した。

古いものの力と自然の力を借りて、空間を引き立ててもらうことで、今回のプロジェクトは完成している。100年もの間代々この場を守り続けてきた方々と、これからここを守り続けていくという住み手の覚悟に、ただただ尊敬の念を抱く。